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東北関東大震災被災労働者人民支援大運動を

2014年版「防衛白書」批判 (1115号9面)

 安倍内閣は8月5日、防衛相・小野寺が閣議に報告した2014年版「防衛白書」を了承した。7月の閣議決定―憲法解釈の変更による「集団的自衛権の行使」容認を受けて打ち出されたもので、実際、内容的にもこの閣議決定を「歴史的な重要性を持つ」と、最大級の賛辞で評価するものとなっている。「集団的自衛権の行使」容認の閣議決定は、初の「国家安全保障戦略」の策定(2013年12月)、「統合機動防衛力」を打ち出した新「防衛計画大綱」の決定(同)、「武器輸出三原則」に代わる「防衛装備移転三原則」の閣議決定(2014年4月)と合わせて、日帝の「安全保障政策」の大転換を表明するものだ。2014年版「防衛白書」は、日米安保の双務化―「攻守同盟」化をもって、「海外で戦争のできる国」への大改造を宣言するものだ。

 安倍政府は今、この「防衛白書」の了承・発表をもテコに、年末における「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」の再改定、そして来年の通常国会での「自衛隊法」改悪など「集団的自衛権」関連法制の成立強行へと突き進んでいる。「防衛白書」に込められた日帝の凶暴性・好戦性を徹底的に暴き出していかねばならない。

「北朝鮮脅威」の一大煽動

 「防衛白書」は、「特集 刊行40回を迎えて〜防衛白書刊行の歴史〜」、「第一部 わが国を取り巻く安全保障環境」、「第二部 わが国の安全保障・防衛政策」、「第三部 わが国の防衛のための取組」、「第四部 防衛力の能力発揮のための基盤」で構成されている。昨年までの三部構成から、四部構成に変化している。

 「特集」では、1970年に初めて「防衛白書」を作成した当時の防衛庁長官・中曽根康弘の一文が付けられている。中曽根が言うには、「『国民の広場』に防衛庁・自衛隊を持ち出す」こと、「茶の間で防衛問題を議論する」ことを目的にして、「防衛白書」を発刊したという。そして、自衛隊は「今や国民からの信頼も厚い組織」になったと自賛している。

 「第一部 わが国を取り巻く安全保障環境」では、何よりも第一に、「北朝鮮脅威」の煽動に力点が置かれている。

 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)による「核兵器の開発・保有」宣言や、「核兵器・弾道ミサイルの拡散」、「大規模な特殊部隊の保持」、くり返される「挑発的言動」、そして、「拉致」などを取り上げて、「日本の安全に対する重大で差し迫った脅威」だと最も厳しい口調で非難し、さらに「(北朝鮮が)米国に対する戦略的抑止力を確保したと過信した場合、軍事的挑発行為の増加、重大化につながる可能性もあり、強く懸念すべき状況となり得る」なぞと書いて、その「脅威」が今後ますます強大化するかのごとく、危機意識を煽り立てている。その一方で、世界に2000発の核弾頭を向けている米帝には、無条件の賛辞を送っているのだ。米帝が長年にわたって「核の先制使用」を公言し、北朝鮮やイランなどへの核攻撃の恫喝を加え続けてきたことは、完全に無視だ。

 さらに「詳細については不明」としながらも、北朝鮮の「生物・化学兵器の保持」という憶測にまで言及している。米帝―帝国主義が対イラク反革命戦争の際、「大量破壊兵器を隠し持っている」と叫び立てたのと同じ構図だ。「(北朝鮮が)きわめて閉鎖的な体制をとっている」、「意図を明確に把握することは困難」だとも述べて、不信と嫌悪を煽ることも忘れない。また、米帝やイスラエルの情報をもとに、北朝鮮が弾道ミサイルや核技術をイラン、シリアなどに「移転・拡散」していると批難している。日帝自らは、原発の輸出を進め、「武器輸出三原則」を破棄して核技術や兵器の移転、共同開発や売買を促進しておきながらだ。

 その上、「市場経済の部分的導入」による「貧富の差の拡大」や「外部からの情報流入」などによって「社会統制の弛緩などに関する指摘もなされており、体制の安定性という点から注目」すべきだとも言っている。北朝鮮の体制崩壊を促進し、その兆しを捉えたら一気に北朝鮮に侵攻するという、米帝の「戦争シナリオ」の一つ(「作戦計画5029」)に寄り沿い、朝鮮反革命戦争参戦の機会を虎視眈々とうかがっているのだ。

 第二に、「グレーゾーンの事態や地域紛争の増加」、「大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散」、「国際テロや破綻国家などの存在」、「国際公共財としての海・空・宇宙空間・サイバー空間の安定利用」などが「安全保障上の課題」だと記している。

 「対テロ戦争」という名の国際反革命戦争にドシドシ参戦していこうという意図がミエミエだ。とりわけ、「イランの核問題」の項目を設けて、イランのウラン濃縮に関して、「レッドラインを越えた場合には軍事制裁を辞さない」と息巻くイスラエル首相・ネタニヤフを擁護し、イランと国連安保理常任理事国にドイツを加えた「核協議」の合意は「歴史的な過ちだ」との発言まで、わざわざ紹介している。対イラン反革命戦争は正当だと言わんがためである。その上で、「原油の約八割を中東地域から輸入しており、同地域の平和と安定はわが国にとって重要」だと強調している。安倍は、「集団的自衛権行使」の事例の一つとして、イランによるペルシャ湾・ホルムズ海峡の機雷封鎖の解除をあげたが、これを受けて「防衛白書」は、対イラン反革命戦争参戦の意図をさっそく表明しているのだ。

 なお、対アフガニスタン反革命戦争については、米帝―帝国主義が一方的に開始した戦争であるにもかかわらず、「紛争」の項目に組み込んでいる。まるで他人事のように描いて、中東支配の暴力的再編という米帝―帝国主義の凶暴な意図を覆い隠そうという魂胆だ。また「シリア情勢」では、アサド政権を非難してその打倒の意図を露わにしている。パレスチナ解放闘争には悪罵を投げつけ、イスラエル・シオニストによる労働者人民虐殺を明け透けに擁護している。

 第三に、各国の軍事動向分析は、そのすべてが、日米安保の強化を結論づけるためのものとなっている。

 米帝・オバマ政権は、「戦略の重点をアジア太平洋地域に置く方針(アジア太平洋地域へのリバランス)」を打ち出した「国防戦略指針」(2012年)を基に、今年3月、「四年ごとの国防計画の見直し」(QDR)を発表した。そこには、先述した「安全保障上の課題」が、そっくりそのままの内容で記されている。正確に言えば、「防衛白書」のこの箇所の記述は、QDRの引き写しなのである。日帝の国際情勢分析が、いかに米帝のそれに依存しているのかを物語っている。必然的に、そこから捻り出される軍事戦略もまた、同様のものとなる。

 「防衛白書」は、「領土問題や統一問題」や「海賊行為」、「少数民族問題」や「分離・独立運動」が存在するアジア太平洋地域において、「米軍のプレゼンスは依然として非常に重要」だと持ち上げ、オーストラリアや韓国などについても「基本的な価値をわが国と共有」し「米国と同盟関係」にあるとして評価する一方、中国に対しては、「(国防費の伸びは)過去10年間で約4倍」で、「海洋における活動を質・量ともに急速に拡大」していると「脅威」を煽っている。

海外遠征部隊と化す自衛隊

 「第二部 わが国の安全保障・防衛政策」は、「集団的自衛権」行使容認の閣議決定、さらに昨年末の「国家安全保障会議(日本版NSC)設置法」と「特定秘密保護法」の成立強行、そして、同じく昨年末の「国家安全保障戦略」と新「防衛大綱」、新「中期防」の成果報告の場となっている。そしてこの成果をもって、年末における「ガイドライン」再改定、次期通常国会における「集団的自衛権」関連法制の制定に突き進むことを宣言している。

 その構成は、「第一章 わが国の安全保障と防衛の基本的考え方」、「第二章 わが国の安全保障と防衛を担う組織」、「第三章 国家安全保障戦略」、「第四章 新たな防衛計画の大綱」、「第五章 統合機動防衛力の構築に向けて」となっている。

 「第一章」では、まず、「見通しがつきやすい国際環境を創出」することが「国家安全保障の要諦」だと言っている。要するに、日帝の軍事力によって全世界を思い通りにコントロールしようというのである。ここで強調すべきは、この「第一章」の大半が「集団的自衛権行使」容認の閣議決定を誇示することに当てられているということだ。ところが、「集団的自衛権」という言葉は、ほとんど出てこない。「個別的自衛権」と「集団的自衛権」を一緒くたに「自衛の措置」と記して、ごまかしているのだ。すべては、労働者人民を欺き、その怒りと闘いをすり抜けようという汚い魂胆からだ。武力行使の「新三要件」について、「,錣国に対する武力攻撃が発生したこと、またはわが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること、△海譴鯒喀し、わが国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと、I要最小限度の実力行使にとどまるべきこと」と、あらためて紹介してその正当化を図っているが、それは無茶苦茶な詭弁・強弁の産物だ。「個別的自衛権」しか意味してこなかった「自衛の措置」の言葉はそのままで、そこに「集団的自衛権」を強引にねじ込んで、「自衛の範囲内での集団的自衛権」なる、いくらでも拡大解釈可能な概念を作り出しているのである。

 「第二章」は、日帝の軍事・外交の「司令塔」である「日本版NSC」の設置と、「特定秘密保護法」制定に関する記述が柱になっている。さらに自衛隊の統合運用体制を強化するため、「衛星通信を含む高度な情報通信ネットワークを活用した指揮統制機能および情報共有態勢」を保持し、「主要部隊司令部には、他自衛隊の幕僚を平素から配置」する方針を打ち出している。政治・軍事の中枢に情報を一元化し共有を進めるとともに、労働者人民に対しては徹底的に情報を管理し、監視・弾圧の体制を作り上げようとしているのである。

 「第三章」、「第四章」、「第五章」は、それぞれ、「国家安全保障戦略」、新「防衛大綱」、新「中期防」の焼直しだ。「第三章」では、日帝が「国際政治経済の主要プレーヤー」になるべきこと、そのために「積極的平和主義」を掲げて、「国際社会の平和と安定および繁栄の確保に、これまで以上に積極的に寄与していく」ことを表明している。軍事力を積極的に行使して「国際秩序を維持・擁護」すると、凶暴な戦争宣言を発しているのである。「第四章」では、「防衛力の『質』および『量』を必要かつ十分に確保」し、「高度な技術力と情報・指揮通信能力」に支えられた「統合機動防衛力」の構築を打ち出している。「統合運用」、「機動展開能力」、「海上優勢および航空優勢」を重視し、その態勢を「整備」していくと言う。陸自では、「師団・旅団の約半数」の「即応機動連隊などからなる機動師団・機動旅団」への改編や「沿岸監視部隊や警備部隊」の新編、「水陸両用作戦」の機動運用部隊を保持すると言う。海自では、「イージス・システム搭載護衛艦の二隻増勢による八隻体制」や「潜水艦部隊の増勢」を唱え、空自では、「那覇基地の戦闘機部隊を二個飛行隊に増勢」することや、「空中給油・輸送部隊に一個飛行隊を新編」することを表明している。「第五章」では、2002年以降減額していた防衛省予算が、安倍政府になってから増額になったことを称賛している。自衛隊の具体的な装備としては、「即応機動連隊」にヘリで空輸可能な「機動戦闘車」を導入すること、「水陸機動団」を新編して「ティルトローター機」(オスプレイ)や「水陸両用車」を装備させること、さらに「新たな護衛艦(多任務対応・船体コンパクト化)」の導入、「無人機の積極的活用」などを打ち出している。自衛隊組織については、「中央即応集団」の廃止―「陸上総隊」への編入、「相手方によるサイバー空間の利用を妨げる能力の保有の可能性についても視野」に入れた「サイバー防衛隊」の創設をあげている。また、「民間輸送力の積極的な活用」に向けた、「艦船の乗組員」や「航空機操縦士」などの予備自衛官への任用を推進することも謳っている。

双務化される日米安保

 「第三部 わが国の防衛のための取組」は、「第一章 国民の生命・財産と領土・領海・領空を守り抜くための取組」、「第二章 日米安全保障体制」、「第三章 安全保障協力の積極的な推進」からなっている。

 まず「第一章」では、「(平素から、)各種兆候を早期に察知するため、わが国周辺を広域にわたり常時継続的に監視」し、「情報優越」や「海上優勢および航空優勢」を確保することが重要だとしている。昨年度の空自機によるスクランブル回数は810回に上ったと豪語し、特に中国軍機に対するスクランブル回数が急増したとして、ここでも「中国の脅威」を煽っている。

 「島嶼部に対する攻撃への対応」には、特に力点が置かれている。「弾道ミサイル攻撃などへの対応」では、「『あたご』型二隻へのBMD(弾道ミサイル防衛)能力の付与」、「イージス艦二隻」の増勢による八隻態勢、来年度までの「全ての六個高射群へのペトリオットPAC―3」の配備を打ち出している。「宇宙空間における対応」については、偵察などの情報収集や通信システムの強化を唱え、「サイバー空間における対応」では、「サイバー攻撃により自衛隊の重要なシステムの機能が停止した場合、わが国の防衛の根幹に関わる問題が発生する」として、サイバー空間を「陸・海・空・宇宙に並ぶ新たな『領域』」と位置づけ、今年度中の「サイバー防衛隊」新設を唱えている。「海洋の安全確保」では、「『海に守られた国』から『海を守る国へ』」なるスローガンを唱えている。強硬・凶暴な軍事力行使の表明だ。「在外邦人等の輸送への対応」については、昨年の「自衛隊法」改悪で、「在外邦人救出」のため自衛隊による陸上輸送を可能にしたが、これを受けて今後は、「輸送防護車」なるものを導入するとしている。

 「第二章」では、「(日米安保は)世界全体の安定と繁栄のための『公共財』として機能」しているなどとうそぶいて日米安保を美化している。その上で「米国でさえ一国のみで自国の安全を確保することは困難な状況」だとして、「日米同盟の強化」を叫び立て、「日米共同訓練」、「共同の情報収集・警戒監視・偵察活動」、「両国の施設・区域の共同使用」の拡大を唱えている。さらに昨年10月の日米安全保障協議委員会(「2+2」)における「よりバランスのとれた、より実効的な同盟とし、日米が十全なパートナーとなる」、「グローバルな性質を反映させる」という確認を紹介している。その結論は、年末の「ガイドライン」再改定だ。

 沖縄・名護新基地建設については、「粛々と進めていく方針」を打ち出し、沖縄労働者人民の闘いを圧殺することを宣言している。「普天間飛行場の代替施設をキャンプ・シュワブ辺野古崎地区およびこれに隣接する水域に建設することが、普天間飛行場の継続的な使用を回避するための唯一の解決策」だとして、新基地が建設されなければ普天間の固定化があるだけだと、沖縄労働者人民に恫喝を加えている。「MV―22は、海兵隊の能力の中核を担う装備」であり、「CH―46に比べて、速度で2倍、搭載能力で3倍、行動半径は4倍という優れた性能」があるとして、オスプレイの普天間配備は、「在日米軍全体の抑止力が強化」されると絶賛している。

 「第三章」では、「同盟国や安全保障上の利益を共有する関係国」と「平素から協力」することを打ち出している。「日米同盟を基軸」として、多国間・二国間の「対話・交流・協力」を組み合わせ、「ネットワーク化」していくのだと言う。とりわけ、日・米・韓、日・米・豪、日・米・印の関係重視を表明している。「海賊対処」についても、「資源や食糧の多くを海上輸送に依存しているわが国にとっては看過できない」として、ソマリア沖派兵の継続を正当化している。「国際平和協力活動」をめぐっては、「現地ミッション司令部や国連PKO局」などへの自衛隊員の派遣を拡大し、「より主導的な役割を果たす」と豪語している。これによって、「国際社会の課題を主導的に設定し、能動的に…国益を増進」させ、「我が国の主張を国際社会に浸透」させると言うのである。まさに力ずくの世界再編の野望を吐露しているのだ。

 「第四部 防衛力の能力発揮のための基盤」は、「第一章 防衛装備移転三原則などの防衛装備品に関する諸施策」、「第二章 国民と防衛省・自衛隊」で構成されている。「第一章」では、今年4月に安倍が「武器輸出三原則」を廃止し、「防衛装備移転三原則」を閣議決定して、野放図な武器輸出に道を拓いたことを受けて、兵器の「国際共同開発・生産」に本格的に突き進むことを表明している。最後の「第二章」では、「自衛隊の精強さを保つため、『若年定年制』や『任期制』を採用」することを強調している。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 「防衛白書」は、日帝の歴史を画する凶暴化と、これを動力とする安倍極右政府の暴走を如実に示している。これを打ち砕く渾身の闘いこそが求められているのだ。

 すでに8月12日、防衛省は鹿児島県・奄美大島の奄美市と瀬戸内町に、計約550人規模の陸自・警備部隊の配備を正式に要請した。新「防衛大綱」にある南西諸島への部隊配備の一環だ。沖縄・宮古島や石垣島への配備も検討されている。今年4月には、与那国島で、沿岸監視部隊の配備に向けた駐屯地の着工も強行されている。8月25日には、防衛相・小野寺が佐賀に出向き、新設される「水陸機動団」に導入する予定のオスプレイを佐賀空港に配備するための要請を行なった。無人偵察機「グローバルホーク」の導入も目論まれている。防衛省は5年後の運用開始に向け、来年、3機の「グローバルホーク」を購入する方針を固めたと報じられている。三沢基地(青森県)に配備するという。こうしたなか、沖縄では名護新基地建設に向けて、8月18日から海底ボーリング調査が強行された。こうした安保強化、自衛隊強化の動きのすべてが、朝鮮反革命戦争の遂行へと収斂されようとしているのである。

 「防衛白書」を徹底的に弾劾せよ。9月末の「2プラス2」開催―「中間報告」発表を許さず、12月「ガイドライン」再改定を阻止せよ。来年通常国会での「集団的自衛権」関連法制の制定を阻止せよ。革命的反戦闘争の大爆発で、日帝・安倍極右政府を打倒せよ。