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東北関東大震災被災労働者人民支援大運動を

世界大恐慌爆発情勢下の世界の労働運動 〈上〉
吉村春彦 (998号6面)

  2011年、世界各地で労働者が帝国主義の支配と資本主義経済そのものを桎梏として闘いに起ち上がった。

 中東―アラブ諸国では帝国主義による原油や資源の強奪と引き換えに強制される高失業や「一日二ドル以下での生活」、帝国主義に存在を許された独裁政権下で労働組合の結成さえ許さない政治支配への怒りが頂点に達し、独裁政権を打倒した。
 資本主義経済中枢各国でも、ゼネスト、工場占拠、篭城闘争が戦闘的に闘いぬかれた。しかしながら、この資本主義経済中枢各国の闘いは、共産主義へと突き抜けていくような展望を欠いているかに見える。
 日本労働運動は、世界の労働運動に比して大きく立ち遅れ、未だ反撃する闘いの態勢を構築できていない。この立ち遅れを早急にとりもどし、日本労働運動こそが、世界の労働運動の先頭にたたなければならない。そのために、二〇一一年の資本主義経済中枢各国の労働運動の特徴的な闘いに注目していく。

ポルトガル

 昨年3月に公務員労働者50万人が24時間ストに起ち上がり、11月には全人口1000万人のうちの300万人が鉄道やバス、航空便の運航を止め、港湾を閉鎖し、医療や銀行部門などの公共サービスも止めるゼネストを闘ったポルトガルでは、11月24日、1年ぶりのゼネストが闘われた。

 ギリシャ、アイルランドにつづいて支援要請を出したポルトガル政府は債務残高が国内総生産(GDP)と同額近くまで達し、失業率は13パーセントを超えている。6月に政権に就いた首相のペドロ・パソス・コエリョは780億ユーロ(約8兆円)の緊急融資を得るために、これまで強行してきた公務員の賃金カット、早期退職者への手当て支給額の削減、民営化に加えてさらなる「緊縮予算」案を国会で成立させようとしている。公務員にさらなる賃金カットや年金カットを強制し、民間労働者にも労働法制改悪による30分の無償の労働時間延長を強制し、医療・教育も削減し、さらに大増税も強行しようとしている。

 この攻撃に対してポルトガル労働者は航空、鉄道、地下鉄、バス、フェリーなどの公共交通のほとんどをストで止め、学校や病院もストに入り、市役所や郵便局なども多くが業務を停止した。ゼネストを呼びかけた「ポルトガル労働総同盟」(CGTP)のマヌエル・カルバリョ・ダシルバ事務局長は「ポルトガルは逆戻りできず、労働者は食い物にされたままではいけない」と宣言し、ストに決起した地下鉄の女性労働者は「私たちはすでに20パーセントの賃下げを受けて、何も買えない。沈没しそうだ」と怒りの声を上げ、電気技術者は「銀行こそ責任をとるべきだ。俺の最大の関心は銀行がどう責任をとるのかだ」と大資本への怒りを爆発させた。

アイルランド

 ユーロ圏の中で債務危機に陥り、「PIIGS諸国」と呼ばれる5ヵ国の一つであるアイルランドはユーロ圏全体の景気後退による輸出減少が圧迫要因になってGDP伸び率予想が最近では2・3パーセントから0・9パーセントに下方修正され、欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)からの支援条件となっている財政赤字目標の達成ができなくなると見られている。失業率は2007年の8パーセントから今年は14パーセントに跳ね上がっている。このようななかで2010年11月27日と12月4日には政府の財政赤字削減のための「緊縮財政政策」に対する労働者の怒りが爆発し、10万人を超すデモが闘われた。教育労働者、公務員労働者、バスの運転士、テレコム労働者、看護師、そして年金生活者など、あらゆる領域の労働者が参加した。労働者の怒りは政権党である共和党や緑の党だけでなく、野党でありながら「緊縮財政政策」に反対しない統一アイルランド党や労働党の影響下にある「労働組合会議」(CTU)に対しても高まっている。

イタリア

 ギリシャにつづいてイタリアで債務不履行(デフォルト)―国家財政の破綻の危機が高まっている。ユーロ圏で3番目の経済規模を持つイタリアでは債務残高がGDP比150パーセントを超え、1・8兆ユーロ(約1800兆円)にものぼり、その返済能力への危機感から国債の利回りが「危険水域」とされる7パーセントを境目にして上下し、世界中のブルジョアジーを恐怖させている。イタリアでは失業率も全体で8パーセント、若年層では28パーセントに達している。

 ベルルスコーニ政権は昨年6月に公務員給与の3年間凍結、年金支給年齢の引き上げ、地方助成金削減によって、250億ユーロ(約2・7兆円)の歳出削減を図る「緊縮財政政策」を打ち出したが、さらに今年に入って455億ユーロ(約5兆円)を削減する「緊縮策」を打ち出した。その内容は、増税や定年年齢を2年引き延ばして67歳にすることなどだ。これに対して9月6日、イタリア最大の労働組合である「イタリア労働総同盟」(CGIL・組合員数約600万人)が呼びかけて数百万の労働者が8時間のストライキに決起した。鉄道やバスは止まり、飛行機も多くの便が欠航し、医療や銀行の労働者も合流し、ほとんどの政府の事務所がまる1日閉鎖された。ローマでは数万人が街頭デモを行ない、「法」案の審議を始めた政府を弾劾し、ベルルスコーニの退陣を要求した。

 さらに、11月5日にもローマで大規模デモが闘われ、イタリア全土から数万人の労働者が参加し、ベルルスコーニを批判する看板や旗を掲げて、即時退陣や早期の解散・総選挙の実施を要求して闘った。

 ベルルスコーニは11月12日に「緊縮策」を盛り込んだ予算案の可決を強行して大統領・ナポリターノに辞表を提出し、元欧州委員のマリオ・モンティが新首相として登場した。イタリア労働者人民はこのモンティ新政権が強行しようとしている「緊縮財政政策」に反対して、11月17日、ローマでの数千人のデモをはじめ、ミラノやトリノなど全国各地でデモを闘い、警官隊や銀行支店、税務署に石や爆竹、卵などを投げつけて闘った。

ギリシャ

 ギリシャでは国債の償還期限が来るたびにデフォルト―国家財政の破綻が現実化している。これに対してユーロ圏の中軸国である仏帝、独帝は、ギリシャ政府に対して労働者に極限的な失業、貧困―生活苦を強制する「緊縮財政政策」を実行するよう圧力を強めている。すでにギリシャでは労働者全体の失業率が16パーセント、若年層の失業率が40パーセントに達し、この2年間で賃金は20パーセント〜50パーセント以上も削減されている。そのうえさらにギリシャ政府は「国家の惨事を避けるために、すべてのギリシャ国民が犠牲を払わなければならない」と宣言して、解雇、賃下げ、極限的な収奪、社会保障削減の攻撃を開始している。その内容は公務員給与の20パーセント削減、国営企業労働者の給与30パーセント削減、3万人の公務員の一時帰休、新たな所得税として1パーセント〜5パーセントの「連帯税」の創設、消費税の23パーセントへの引き上げ、年金受給年齢の65歳への引き上げと受給額の20パーセント削減、所得税非課税限度額の年8000ユーロから5000ユーロへの引き下げ、最低賃金の月600ユーロ(約6万円)への引き下げ、タバコ、アルコール、燃料の税率引き上げ、公共交通機関の料金の40パーセント値上げなどであり、まさに考えつく限りのすべての犠牲を労働者人民に強制するものであり、「カラ雑巾をさらに絞る」攻撃と言うべきものになっている。公務員への「一時帰休」攻撃は「予備労働者制度」として創設され、今回の3万人に止まらず、今後はさらに20万人に拡大され、減額された賃金の6割が支給される「猶予期間」の1年以内に新たな部門で仕事を見つけなければ解雇されるというものだ。

 このような解雇、賃下げ、収奪、社会保障の削減攻撃は失業した労働者の自殺の増加をまねき、青空市場でクズ野菜を拾って生き延びざるを得ない人々を生み出している。この攻撃に対して、ギリシャ労働者人民は昨年の7波に及ぶゼネストを引き継いで、今年も「緊縮財政政策」を粉砕する怒りの闘いに決起している。

 5月にパパンドレウ政権が新たな「緊縮財政政策」を発表すると、労働者や若者はアテネなどの主要都市の広場を占拠する闘いを開始した。「緊縮財政政策」についての国会審議が始まる6月15日には全国で大規模なゼネストとデモを闘った。国会での採決の強行に対しては6月28日から民間企業労組「ギリシャ総同盟」(GSEE・組合員数約200万人)と公務員労組「ギリシャ公務員労組」(ADEDY・組合員数約75万人)が48時間ストに突入。交通はストップし、銀行も休業、病院も最小限のスタッフを残してストに参加した。空港は断続的に閉鎖され多くの便が運休となった。アテネでは数千人が国会を包囲し、警官が発射する催涙ガスに屈することなくデモ隊は警官に石を投げ、こん棒などで武装したデモ隊は財務省ビル玄関の窓ガラスを叩き割りビル内にある郵便局に火を放って闘い、7月1日の早朝まで警官隊との実力攻防を貫徹した。デモを闘う労働者からは独帝への怒りが高まり、「ドイツの首相・メルケルはギリシャを投機家に差し出した。デモを継続し、ヨーロッパ規模の統一した社会運動の組織化が必要だ」「不当な債務返済を拒否する運動をやろう」という声が上がった。

 10月に入ると闘いはさらに拡大・強化して闘われた。10月5日には再びGSEEとADEDYによるゼネストが闘われ、公立病院の医師や公立学校の教師が職場を離れ、空港の管制官らが24時間のストを打ち、アテネ中心部の国会前広場には2万人が結集し警察の催涙ガスにひるむことなく投石戦を貫徹した。

 10月19日からは「緊縮財政政策」を承認しようとする国会に対してGSEE、ADEDYに加えて共産党系労組連合の「全ギリシャ戦闘的労働者戦線」(PAME)が合流して48時間のゼネストが闘われた。この闘いでは、主要産業部門と公的機関の九割が参加し、工場、中央官庁の多くの建物が占拠され、公共交通機関も完全にストップした。十数万の労働者、学生、市民が国会を包囲した。デモは全国70都市で闘われ、全人口の10パーセントに当たる100万人が起ち上がった。

 パパンドレウは「このままではデフォルトになり、国家財政が破綻する」と議員を脅しで「緊縮財政政策」を可決させたが、全国民の7割が反対する「政策」を強行する責任から逃れるために国民投票の実施を言い出した。これに対して、独帝、仏帝は国民投票が実施されれば否決されることは明らかであり、デフォルトの連鎖がユーロ圏を襲うことに恐怖してパパンドレウに圧力をかけ、パパンドレウは国民投票を取り下げ、全ギリシア社会主義運動(PASOK)と新民主主義党(ND)による「連立政権」の成立を条件にして辞任した。パパンドレウに代わって新首相に欧州中央銀行前副総裁のパパデモスが就任したが、ギリシャ労働者人民は11月17日、「EUとIMFは出て行け」という叫びとともに国会前などで5万人以上が増税や賃金削減に抗議するデモを闘い、鎮圧に当たった警官隊とぶつかり合い、数十人の逮捕者を出しながらも闘いぬいている。さらに12月1日にはギリシャの主要労組が呼びかけ、政府の「緊縮財政政策」に抗議する今年六回目の24時間のゼネストをパパデモス政権に叩きつけている。

スペイン

 失業率が全体で21パーセント、若年層で46パーセントにものぼるスペインでは、サパテロ政権の「緊縮財政政策」に対して昨年6月の公務員ストや9月の8年ぶりのゼネストが闘われた。しかし、その後、このゼネストを呼びかけた二大労組である「労働者委員会」(CO)と「スペイン労働総同盟」(UGT)が社会労働党の政府とのあいだで社会協定を結んで闘争体制を解除した。スペイン政府は昨年7月、雇用主が解雇時に労働者に支払う解雇補償金の負担を軽減する「労働市場改革」を実施した。「正社員を解雇しにくいことが、企業が新たな正規雇用を控える原因になっている」という理由で実施した「労働市場改革」は資本が労働者の解雇を好き放題にできる状況を作った。これに対して、闘争を放棄したCOやUGTに代わって若者たちが「政府も企業も経費削減しか頭にない。雇用対策は、企業に解雇の良い口実を与えただけだ」と批判して新たな闘いを開始している。

 「『怒れる者たち』の運動」と呼ばれる闘いは、チュニジアやエジプトでの闘いに触発された若者たちがフェースブックなどのソーシャルメディアを使ってグループを形成し、五月一五日のデモを呼びかけて始まった。「私たちは銀行家や政治家の商品ではない」というスローガンを掲げた「緊縮財政政策」に抗議するデモには二万人が参加し、若者約三〇〇人が同市の中心部にある「プエルタ・デル・ソル(太陽の門)広場」で野営を開始した。この運動の中心的なグループの一つである「未来のない青年たち」は、「家もない、仕事もない、年金もない、だから何も恐くない」というスローガンを掲げている。
 5月21日には、翌日の地方選挙のために集会・デモが禁止されていたが、弾圧に屈することなく、夕方から3万人が広場に集まり、政府の「緊縮財政政策」に怒りを表した。バルセロナ、バレンシア、セビリア、ビルバオなどの都市でも抗議行動が行なわれた。

 さらに、6月19日には、5月15日にデモを呼びかけたことから「M15運動」と呼ばれるようになった「怒れる者たち」がインターネットなどで呼びかけたデモには、高失業率や金融市場の支配、社会政策への予算削減に怒る若者を中心とするあらゆる世代、社会階層の人々が全国60の都市で20万人が結集した。スペインでのこの闘いは米帝足下での「ウォール街占拠運動」が始まるきっかけとなったといわれている。

フランス

 各国政府の債務問題が財政・金融危機としてユーロ圏全域を襲うなかで、フランスでも内需が縮小し、2011年第2・四半期のGDPの伸びはゼロとなった。さらに財政赤字の比率がユーロ圏が基準としているGDP比3パーセントを超えて5・7パーセントに達し、国債の格下げが現実化しようとしている。また、昨年サルコジ政権が強行した「公的年金制度改革」によって年金受給開始年齢が引き上げられたために55歳以上の労働力人口が増え、失業率を押し上げる結果をまねいている。特に都市政策で貧困地区としてリストアップされている751地区での失業率は、就業可能な若者のうち、男性では43パーセント、女性では37パーセントに達している。こうしたなか、フランス政府は8月にタバコ、アルコール、清涼飲料水などの税率を上げる「財政赤字削減策」を発表し、1ヵ月800ユーロ(約8万円)以下の年金で生活せざるをえない退職者をはじめとして、物価高騰で生活苦を強いられる労働者の怒りを強めている。

 この労働者の怒りが10月10日、フランス各地でのデモ、ストライキとして爆発している。10日にはリヨンの製油所の職員がストライキに入り、公共交通機関、学校や病院の職員など、公務員の多くがストライキに入った。11日にはサルコジ政権の「緊縮財政政策」に抗議するデモが闘われた。

 さらに、米帝足下で始まった「ウォール街占拠」デモに連動した闘いがフランスでも始まっている。11月4日にはパリ近郊にあるヨーロッパや世界の大企業や金融機関が集まるラ・デファンス地区の占拠運動が「世界のたった1パーセントに過ぎない資本家が、99パーセントの人々のために計画を立て、緊縮政策を実施している」という声明を発表して始まり、カンヌで開かれた「主要20ヵ国・地域」(G20)首脳会合に対する闘いを闘った若者や労働者が合流している。

ドイツ

 ドイツ労働運動は、ユーロ圏のなかで唯一低水準ながらGDPの伸びを維持している資本に対して果敢に賃上げ闘争を闘っている。2011年春闘ではデモや「警告スト」(労働者の団体行動権として法的に認められた資本に対する勤務時間内の「スト」警告のための集会)で資本に圧力をかけ、3パーセント〜5パーセントの賃上げをかちとっている。

 化学産業分野の55万人の労働者を組織する「鉱山・科学・エネルギー労組」(IG・BCE)が4・1パーセント、通信会社ドイツ・テレコムと交渉していたテレコム労働者10万5000人を組織する「統一サービス産業労組」(Ver.di・ベルディ)が最大で5・15パーセントの賃上げをかちとっている。ベルディは、6・5パーセントの賃上げを要求し、全国で2時間〜3時間職場放棄する「警告スト」を闘い、賃上げを実現したのだ。化学産業分野では産業全体で爛蝓璽泪鵝Ε轡腑奪甍柄阿旅字レベルに戻っているとして労組側が7パーセントの大幅賃上げを要求し、9000人を超えるデモを闘った。

 また、ドイツでは2002年からの労働市場の規制緩和によって派遣労働者が増え、2010年時点で90万人に達している。とりわけ若年労働者の失業率も9・1パーセントと高く、4割が「非正規雇用」とされている。そういったなかで、英・独・仏・スペインの航空機製造の国際共同会社「エアバス」が景気変動を理由に派遣労働者を解雇し、将来ドイツ工場の一部をフランスへ移転する計画を明らかにした。これに対してドイツ最大の産別労組である「金属産業労組」(IGメタル・230万人)は「2020年までの雇用保障と派遣労働者などへの権利擁護を約束する労働協約の締結」「2年以上勤務した派遣労働者の正規労働者としての雇用」などを求めて会社側と団体交渉を闘ってきた。11月5日にその交渉が決裂したため、7日から1万5000人の「警告スト」に突入している。

 さらに、ドイツでは反原発闘争が高揚している。東北・関東大震災の翌日の3月12日にはシュトゥットガルトで6万人の反原発「人間の鎖」行動が闘われ、3月14日までにベルリン、ケルン、デュッセルドルフなど450以上の都市・地域で総計11万人が集会やデモに起ち上がっている。