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東北関東大震災被災労働者人民支援大運動を

世界大恐慌爆発情勢下の世界の労働運動 〈下〉
吉村春彦 (999号11面)

イギリス

 英帝足下では失業者数が17年ぶりの水準に増加している。統計局が発表した今年6-8月期の失業者数は11万人増えて256万人となり、失業率は7・9パーセントから8・1パーセントへと上昇し、失業期間2年以上の長期失業者層を中心に増加傾向にあり6ヵ月未満の短期の失業者を上回っている。若年失業者数は調査開始以降で最高の99万人となり、失業率は21・3パーセントに達した。

 膨大な財政赤字を解消するために、キャメロン保守党政権は2015年までの間に800億ポンド(約10兆円)の歳出削減策を打ち出し、付加価値税(消費税)の2・5パーセント引き上げが物価上昇に拍車をかけている。昨年10月に英財務相が発表した歳出削減策は、2014年度までの4年間で公務員49万人を削減、社会保障、住宅、高等教育、医療、公共サービスなどの予算を大幅に削減するという内容だ。

 これに対して「公共サービス労組」(UNISON・130万人)、「公共・商業サービス労組」(PCS・30万人)をはじめとする労働組合はこの計画と全面的に対決する闘いを呼びかけている。

 3月26日にはロンドンで「労働組合会議」(TUC)が呼びかけたキャメロン政権の歳出削減計画に反対するデモに50万人が結集し、2003年のイラク戦争反対以来最大のデモを闘っている。全国から800台のバスと10本の列車をチャーターして教員、看護師、助産師、国民健康サービス(NHS)などの公共部門の労働者と、学生、年金生活者、社会運動活動家など広範な労働者人民が結集し、都心の交通は完全に停止した。

 8月にはロンドン北部の貧困地帯トットナムでの警察官による黒人男性射殺事件が起き、警察が事実を捏造したことが発覚し、8日夜から若者による暴動が発生した。暴動は高い失業率に怒る若年層の労働者も合流し、イギリス第2の都市バーミンガムやリバプール、マンチェスターへも波及した。この暴動の過程では日本企業も標的とされ、ソニーの流通センターが焼き討ちを受けている。
 また、学生も「緊縮財政政策」に対する闘いに起ち上がっている。一一月九日にはロンドン市内で授業料の値上げに抗議する学生に電気技師やタクシー運転手も合流して数千人のデモが闘われているのである。
 さらに、一一月三〇日には官公労約三〇組合が、年金保険料引き上げと勤労年数延長に抗議する二四時間ストライキに突入した。このストライキは、公立の医療機関や学校、交通機関に加え、国境警備や出入国管理部門など、総数六〇〇万人の公務員のうち、二〇〇万人が参加し、英帝足下でのストとしては過去三〇年で最大規模の闘いとなっている。

アメリカ

 2011年の米帝足下の労働運動の第一の特徴は、高い失業率と「非正規雇用」の拡大によって貧困層に叩き落されている若年層の労働者が、既存のナショナルセンターである「アメリカ労働総同盟・産業別組合会議」(AFL・CIO・組合員1150万人)の枠の外から「ウォール街を占拠せよ!」というスローガンを掲げて闘いに起ち上がり、既存の労働組合もそれに引きずられるように合流を開始していることだ。

 米帝足下では若年層の失業率が上昇し、貧困層に叩き落される若年層が増えている。全体の失業率が9パーセント台に高止まりする一方、若年層の失業率は2007年から2010年にかけて約8パーセント上昇して18・4パーセントを記録し、10代の失業率は25パーセントを突破している。失業率だけでなく「非正規雇用」率も、2007年の34パーセントから2010年には38・8パーセントに上昇している。また、今年3月の時点で、25歳から34歳のアメリカ人の14・2パーセントに当たる約600万人が、親と同居していることが明らかになった。2007年時点の470万人と比較すると爛蝓璽泪鵝Ε轡腑奪甍瞥25・5パーセントも増加したことになる。男性の同居率は女性の約2倍で、この年齢層の婚姻率も44パーセントと、過去最低を記録した。親から自立して生活することができず、結婚することもできない若年層が増え続けているのだ。

 このような失業と貧困のなかから、9月17日、「ウォール街占拠運動」が開始された。若年層を中心にして「仕事がないことで最も多くのものを失うのは私たちだ。だから、ここにいる!」「ウォール街を占拠しよう!」「1パーセントの金持ちに税金を、99パーセントの我々には食糧を!」というスローガンのもと、ウォール街近くの公園を占拠し、ウォール街への抗議デモが開始され、「反格差デモ」として全世界に拡大している。この動きに対してAFL・CIOも無視できなくなり、会長が「労働組合は全国レベル、地方レベルの双方で『ウォール街占拠』に参加している。米国社会において、輸出入バランス、労使の力関係、実体経済と金融経済のバランスなど均衡が必要なものがある。しかし、今や金融経済は実体経済に対してコントロール不可能なほどに肥大化している。そのバランスを実体経済に引き寄せなければならない」とコメントせざるを得なくなっている。そして、「全米運輸労組ローカル100」、介護・看護労働者を組織する「サービス従業員労組」(SEIU)、「全米鉄鋼労組」(USW)、ニューヨーク市AFL・CIO、「教員連盟」、「米国通信労働者組合」のほか、これらの組合を組織する「ニューヨーク市中央労働組合評議会」が参加を表明している。

 第2の特徴は、財政赤字を抱える州政府の知事に就任した共和党右派・「茶会グループ」が一斉に公共部門労組への攻撃を開始し、攻防が激化したことだ。

 米帝足下では労組の組織率が2010年には11・9パーセントにまで落ち込み、民間部門は組織率が6・9パーセント(709万人)、公共部門は組織率が36・2パーセント(762万人)となり、民間部門の組織率の低下が著しくなり、公共部門が相対的に浮き上がることになった。そこを共和党右派・「茶会グループ」が標的にして攻撃をかけてきたのだ。

 ウィスコンシン州では知事に就任したウォーカーが、「財政再建」を掲げて公務員の年金・健康保険への支出の削減を狙い、そのために公務員労組の団体交渉権を否認する法案を議会へ提出した。その内容は、団体交渉事項を賃金のみに限定、大学教職員・大学病院職員、在宅介護や保育労働者の団体交渉権剥奪、組合費のチェックオフ(天引き)禁止、組合支持の認証選挙実施と過半数割れ組合との労働協約の破棄、労働協約期間の一年間限定、消費者物価指数以下の賃上げ、年金や健康保険の職員負担の増額といったものであり、労働者を分断するために消防士と警察官を法案の対象から除外するという攻撃を仕掛けてきた。これは交渉権の剥奪に止まらない、労働組合そのものの解体を狙った攻撃だ。同様な攻撃はイリノイ州、オハイオ州、ワシントン州等でも「茶会グループ」に支持された共和党知事が開始した。

 これに対する反撃の闘いは、2月15日にウィスコンシン州の州都マジソン市で数千人の公務員が参加したデモから開始された。この日以降、連日デモが続けられ、教員、看護師のほか多くの学生、市民も参加し、州庁舎はデモ参加者によって占拠され、警察官もデモに連帯して、デモ隊排除の命令を拒否した。また、2月26日には全米50州の州都で、公務員の闘いを支持するデモが行なわれ、マジソンの州庁舎の前には10万人が結集した。3月9日には知事・ウォーカーが法案の採決を強行したことに対して労働組合員と支持者8000人が抗議の闘いに結集し、州庁舎全フロアを占拠し、中高生1000人も授業放棄してデモを闘った。4月4日にはウィスコンシン、オハイオ、インディアナなどで州政府の公務員労組攻撃との闘いに連帯する集会とデモが全米1000ヵ所以上で闘われ、100万人以上が結集した。この反撃の闘いは、いったん成立した州法を撤廃するための州民投票にむけた運動や、共和党議員や知事のリコール運動として継続されている。

韓国

 韓国では昨年の現代自動車での闘いを引き継ぐ「非正規職労働者」の闘いが継続され、さらに資本の大量解雇、労組破壊攻撃、米韓「自由貿易協定」(FTA)に対する労働者の反撃の闘いが燃え上がっている。

 昨年末、蔚山で大法院判決に従って「非正規職」労働者の「正規雇用」を要求して25日間の工場占拠闘争を闘った「現代自動車非正規支会」の闘いは、「正規支会」が会社側との合意を「非正規支会」に強制したことで中止に追い込まれた。会社側はその後、報復的に54人の解雇、数百人の停職処分や損害賠償請求などの攻撃をかけてきた。しかし、解雇された組合員はタクシー運転、代行運転、日雇い建設労働などのアルバイトで生活と活動の費用を捻出し、職場に残った組合員は会社側の組合脱退工作をはねのけながら新たな闘いの準備に入っている。

 2月にはGM大宇自動車の「非正規職支会」が解雇者全員の復職を資本に認めさせる勝利をかちとった。GM大宇自動車資本は2007年に「非正規職支会」の結成に対して解雇攻撃をかけた。これに対して3年にわたるテント座り込み闘争が継続され、昨年12月からは組合員2人が「解雇撤回、非正規職の正規職化」を要求して工場正門のアーチで高空篭城闘争に決起し、支会長は無期限ハンストに突入した。座り込み1192日、高空篭城64日、ハンスト45日の闘いによって労組は解雇者15人全員の復職をかちとった。

 この闘いの勝利につづき、造船業・韓進重工業での整理解雇攻撃を撤回させる勝利もかちとられている。韓進重工業は黒字経営にもかかわらず昨年1年間で下請け・「非正規」を含め3000人以上の労働者の首切りを強行し、さらに年末に「正規職」400人の削減を発表し、希望退職に応じなかった組合員を整理解雇した。この攻撃に対して、労働組合は全面ストライキと工場内での徹夜座り込みに突入し、韓進重工業の解雇者で組合員でもある民主労総釜山本部の金ジンスク指導委員が1月6日から地上35メートルの85号クレーンでの高空篭城闘争を開始した。この85号クレーンは、2003年の争議で当時の労組委員長だった金ジュイク支会長が129日間の座り込みを闘い、最後は抗議の首つり自殺をした場所だ。この高空篭城闘争に対しては韓国全土から支援の労働者が「希望のバス」を仕立てて結集し、警察の阻止線、放水、催涙ガス、警棒と対決して共に闘った。そしてついに11月10日、高空篭城闘争309日めに解雇者の1年以内の再雇用という勝利をかちとったのだ。

 牙山(アサン)にある自動車部品メーカーのユソン企業(株)では、5月から「金属労組ユソン企業支会」が、「用役」と称する暴力ガードマンが労働者部隊に自動車を突入させるといった殺人行為や鉄パイプ、角材、消火器を使った武装襲撃、警察による工場内で座り込みを闘う組合員530人全員の連行といった弾圧を受けながらもストライキを闘いぬいた。「ユソン企業支会」の要求は、すでに2年前に労使で合意した夜間労働の廃止―昼間の二交代制勤務の実施と時給制から月給制への変更だ。ユソン企業の労働者は1ヵ月平均で30時間の残業、8時間の夜間労働、37時間の週末労働をすることで入社7年目でも時給換算で440円の基本給という低賃金を補充することを余儀なくされてきた。その結果、1年半で4人の労働者が自殺したり、病死するという悲惨な事態が発生していた。電子、自動車、造船といった韓国の主要な輸出産業が国際競争でシェアを拡大させてきたのは、こういった低賃金と長時間労働を強制し、国家権力を使った労組弾圧をくり返してきたからだ。同じ境遇に置かれている労働者はユソン企業での闘いに注目し、連帯・支援の闘いに全国から起ち上がった。会社側は10回以上の交渉でもまったくこれを実現しようとしないため、ついに「ユソン企業支会」は5月からのストに突入したのだ。ユソン企業は現代自動車や起亜自動車などのエンジンのピストンリングを生産し、国内で八割のシェアを持っており、ストはこれらの自動車メーカーへの部品供給を止め、生産を停止させるに至った。輸出産業への打撃を脅威と感じた大統領・李明博はラジオ演説でユソン企業での闘いを「年俸7000万ウォン(約525万円の高給)をもらう勤労者たちの違法ストライキだ」などとデマを流し、「労使協力を通して生産性を高め、相生経済を必ず成し遂げよう」と、韓国の資本ののど元に刃を突きつけたユソン企業での闘いへの憎悪をあらわにした。ユソン企業での闘いは8月に労使合意文書を取り交わし、組合員は職場に復帰したが、未だ夜間労働を廃止しないユソン企業に対する新たな闘いを準備している。

 11月には民主労総が呼びかけた米韓FTA締結阻止の闘いがソウルでの十数万人の集会・デモとして闘われ、11月22日に与党・ハンナラ党が国会で強行採決した後も国会付近のソウル・汝矣島(ヨイド)公園で5万人が結集した反FTA集会が闘いぬかれている。