名護新基地建設問題の「完全決着」を狙った安倍政府
9月30日投開票の沖縄「県」知事選は、自由党、社民党、共産党、国民民主党、立憲民主党が支援する前衆院議員の玉城デニーが、過去最多となる39万6632票を獲得し、初当選した。選挙戦は、自民党、公明党、「日本維新の会」、「希望の党」が推薦する前宜野湾市長の佐喜真淳との事実上の「一騎打ち」となった。前回の知事選で「自主投票」だった公明党が佐喜真支持を明確にしたこと、同じく前回知事選で下地幹郎を立てて約7万票を獲得した「日本維新の会」が独自候補を擁立せずに佐喜真支持に回ったことなどから、玉城の「苦戦」も予想されていたが、蓋を開けてみれば、佐喜真に8万票以上の大差をつける「圧勝」となった。
安倍政府・与党は、今回の知事選を、新基地建設問題の「完全決着」(官邸関係者)の場と位置づけ、「総力戦」で臨んだ。「完全決着」というのは、次の意味からである。
第1に、佐喜真勝利なら、新基地建設阻止闘争から「県」という「後ろ盾」を奪い、逆に「新基地建設こそ沖縄の民意」と強弁して闘いを政治的に孤立させ、思う存分の潰しに入れるからだ。
第2に、佐喜真勝利なら、沖縄「県」当局が8月31日に行なった「公有水面埋立承認撤回」問題も容易にクリアでき、直ちに工事に入れるからだ。安倍政府は、「埋立承認撤回」に対する「法的措置」として、� 崗鞠�撤回」の「取消」を求める訴訟を起こすとともに、その訴訟が終わるまでの間、「撤回」の効力を停止させる「執行停止」を申し立てる、�◆峺�有水面埋立法」を所管する国土交通相が「県」に「承認撤回」の「是正勧告」を行ない、従わなければ「承認撤回」を「県」に代わって「撤回」するために、高裁に訴訟を起こし、その場合にも、併せて裁判所に「執行停止」を申し立てる、などの方法を検討していた。ところが佐喜真が勝てば、�△僚藉�段階の措置を講じるだけ、すなわち、「県」に「承認撤回」の「是正勧告」を出すだけでよい。「安倍のイエスマン」・佐喜真なら、直ちに「勧告」に応じ、「承認撤回」の「撤回」を行なうであろう。「県」による「承認撤回」を受けて、安倍政府が直ちに「法的措置」に踏み込まなかったのは、間近に迫った知事選で新基地建設問題を争点にさせないよう、表立った対抗措置は極力避けたいという思惑が働いたことが最大の理由だが、誰が知事になるかによって、採るべき「措置」が違ってくるという事情にもよる。
第3に、工事を阻止するための知事権限の行使を完全に封じることができるからだ。今後において、「超軟弱地盤」などの深刻な問題を抱える大浦湾側の護岸建設―埋め立てを進めるには、大規模な地盤改良工事を行なうなど、大幅な工法変更が必要であり、そのためには「公有水面埋立法」に基づき、「県」に「設計概要変更申請」をするなどの手続きが不可避になってくるのだが、この手続きにおいて、知事の「承認」が得られなければ、工事はまた、そこで行きづまることになる。しかし知事を「イエスマン」にしてしまえば、「変更申請」の前から、「承認」はすでに約束されたようなものだ。
大破産した「勝利の方程式」
そのために、安倍政府―与党は、選挙戦にあたり、「名護市長選方式」を全沖縄「県」下で展開した。それは、今年2月の名護市長選における新基地建設容認派・渡具知の勝利で味をしめたもので、�ー�・公・維の選挙協力、��官房長官・菅の陣頭指揮のもと、官邸主導で選挙活動の一切を取り仕切る、�3稿�演説など表立った選挙応援は小泉進次郎に任せ、閣僚経験者などがひたすら業界廻りをして票固めをする「ステルス選挙」、�ち換颪料浪然慍餔�を総動員して、有権者をあの手この手で期日前投票に連れ込む、などを特徴とする。実際、小泉進次郎は3回にもわたって沖縄入りし、公明党―創価学会は数千人規模で乗り込んでは、沖縄各地の路地という路地をうろつき回った。
しかし、沖縄労働者人民は、新基地建設問題の「完全決着」という安倍の目論見を粉々に打ち砕いた。「新基地建設絶対反対」が「沖縄の民意」であることを改めて政府に突きつけ、全国に示し、新基地建設阻止闘争の勝利の展望を大きく切り拓いたのだ。「残念だが仕方ない」とは、佐喜真敗戦を知らされた直後に、茫然自失の安倍がようやく絞り出した一言である。あまりの打撃の大きさに、ぐうの音も出なくなっているのだ。
今回の知事選では、名護新基地建設の是非が最大の、と言うより唯一の争点となった。知事選は、さながら、新基地建設をめぐる「県民投票」の様相となった。安倍―菅―佐喜真陣営は、名護市長選と同様、「辺野古の『へ』の字も言わない」という作戦を採り、「争点隠し」に躍起になったのだが、まったくの徒労に終わった。「埋立承認撤回」の手続き着手を表明した前知事・翁長の急逝と、これを引き継いだ「県」当局による「承認撤回」という現実の前には、「争点隠し」の選挙戦術がつけ入る余地はまったくなかったのである。しかし、前知事・翁長による「承認撤回」の表明も、これを引き継いだ「県」の「承認撤回」も、闘う沖縄労働者人民の激しい突き上げがなければ到底ありえなかったことからすれば、辺野古現地を先頭とする新基地建設阻止の頑強な闘いが沖縄労働者人民の魂を鼓舞し続けたことが、玉城に勝利をもたらした最大の要因と言える。実際、新基地建設をめぐる「県」の環境部、土木建築部をはじめとする担当部局内には、新知事が誰になるのか、様子見を決め込む幹部も多く、「承認撤回の判断は知事選後に」という主張も根強く存在していた。渋る「県」当局に対する再三にわたる労働者人民の怒りの追及行動がなければ、知事選前の「承認撤回」もなかったのである。
安倍―菅―佐喜真陣営の「敵失」についても、指摘しておかねばならない。「争点隠し」に躍起になりながら、それに代わる新たな争点を何も提示しなかった(できなかった)のだ。佐喜真は、ひたすら「政府とのパイプ」を強調し、「予算獲得」による「経済振興」を叫んだのだが、「経済振興」の中身は貧相そのもので、「バブル期を超える空前の好景気」(「琉球新報」)に沸く沖縄で、「新機軸」のない「予算増額」「経済振興」が争点になるはずもなく、沖縄のブルジョア、小ブルジョアを魅了することはなかった。中身の貧相さは、知事の権限とは縁もゆかりもない「携帯電話料金四割削減」なるものまで公約に掲げたことにも、端的に示されている。逆に佐喜真が「政府とのパイプ」を言えば言うほど「政府の言いなり」への怒りが拡大し、「予算獲得による経済振興」を言えば言うほど、「基地強化のための利益誘導」への嫌悪が拡大した。おかげで、マスコミの出口調査によると、自民党支持層の24パーセント、公明党支持層の27パーセントの票が玉城に流れたという。
とりわけ大ヒンシュクを買ったのが、札束で横っ面を張るような安倍―菅の手法である。日本「本土」から送り込まれて企業回りを行なった国会議員どもは、口を開けば「振興予算の増額」。これには地元の企業経営者たちも不快を禁じえず、「金の話ばかりするな」と公然と苦言を呈する者もいたという。
労働者階級の利害を鮮明に新基地建設阻止決戦勝利へ
官邸主導の「ステルス選挙」の破産、利益誘導型選挙の破産をうけて、佐喜真にすべてを賭けた自民党沖縄「県」連の幹部までが、「官邸は、沖縄のことを分かっていない。県民は、賢明な判断をしたのかもしれない」と言い出す始末である。
その上で押さえておくべきことは、経済・社会政策における無策は、玉城も一緒であったということだ。新基地建設をめぐる態度を除けば、どちらが自民党の公約か、ほとんど区別がつかない内容となっている。経済・社会政策がまったく争点にならなかったがゆえに、その無策ぶりが目立たなかっただけだ。佐喜真同様、玉城も「貧困対策」は口にしたが、貧困の根底にある低賃金、長時間労働、不安定雇用など、沖縄労働者人民が置かれた苛酷な労働環境の変革に、言及はなかった。それが、保守層を安心させた。「全国一の非正規雇用率」を問題視し積極的に指摘したのは、むしろ佐喜真の方だった。無論、佐喜真の魂胆は翁長「県」政への当てこすりであり、問題解決の意欲など微塵もないことは明らかなのだが。
要するに玉城も、所詮は小沢自由党所属の政治家なのであり、前知事・翁長同様、「基地の整理縮小」による跡地利用、観光開発と大企業誘致に沖縄経済の展望を見出す沖縄ブルジョアジーの一分派の利害の体現者だということだ。玉城の選挙母体である「ひやみかち うまんちゅの会」の会長は、沖縄の総合大手・金秀グループの会長・呉屋であり、沖縄における低賃金、長時間労働、不安定雇用を推進するトップランナーだ。その呉屋を激怒させるような政策を、玉城が言えるはずもない。玉城は沖縄労働者階級の利害の体現者ではないこと、労働者階級の経済的隷属―窮乏化の深刻な現状は何も変わっていないこと、玉城に対する幻想は禁物であること。これらのことは、確認しておく必要がある。
今回の知事選は、「新基地建設絶対反対」の「民意」を改めて鮮明にするとともに、政府の暴力にもカネにも屈することなく、勝利まで闘いぬくという沖縄労働者人民の燃え立つような闘志を満天下に示すものとなった。玉城当選から一夜明けた10月1日、勝利の歓喜に沸く辺野古現地では、「沖縄平和運動センター」議長・山城博治氏が、「辺野古のゲート前の闘いは、たった20人かそこらの座り込みから始まった。当初は、通行人から、『あんたたち、そこで何やってんの?』と冷笑されることもしばしばだった。それが今や、知事選の最大の争点となり、40万票という支持を受けるに至った」と感慨深く語るとともに、「闘いはいよいよこれから。最後の勝利まで闘いぬこう」と力強く呼びかけた。
安倍政府は、この選挙結果を受けてもなお、「辺野古移設の方針は何ら変わらない」(菅)と強弁して、新基地建設を強行しようとしている。工事強行のための「法的措置」に踏み出そうとしている。いよいよ本格的な決戦攻防の時が迫っているのだ。現地集中と実力闘争こそ、勝利の道だ。沖縄―日本「本土」を貫く革命的共同の力で、新基地建設実力阻止、安倍政府打倒へ、ともに進撃しよう。
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