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東北関東大震災被災労働者人民支援大運動を

―中東情勢―   〈中〉  (982号7面)

帝国主義支配を根幹から揺さぶる
中東―アラブ諸国労働者人民の実力決起

 岸川 貞雄

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イエメン

 大衆決起に直撃され、さらに武装勢力に攻撃されながら、米帝―帝国主義の庇護の下で見苦しく延命を図るサレハ政権に対する、イエメン労働者人民の怒りが爆発している。
 サウジアラビアなど6ヵ国で構成される湾岸協力会議(GCC)は、大衆決起がイエメン革命に至ることに恐怖するがゆえに、「大統領の1ヵ月以内の辞任」を落としどころとした、野党連合との調停を目指してきた。しかし大統領・サレハは4月30日、GCCの調停案を不服として大統領辞任を拒否。5月13日、サレハは大衆決起に対して「破壊者が破壊行為をやめない限り、治安当局が対応せざるをえない」と弾圧強化を宣言。同日、治安部隊がデモ隊に発砲し、3人が死亡した。
 サレハへの怒りが噴出するなか、6月3日、反政府武装勢力が大統領宮殿を攻撃した。サレハは負傷し、翌4日に治療のためにサウジアラビアに搬送された。副大統領・ハディが大統領職を代行することになった。事態の沈静化を狙うサウジアラビアは、政府と対立する最大部族のハシド族との和解を仲介し、停戦合意させた。しかし、納まらない他の反政府武装勢力は、イエメン各地で政府軍と衝突した。6月7日には南部・タイズで、大統領の長男が指揮する「共和国防衛隊」と、反体制派の部族民兵や政権を離反した兵士らが衝突している。
 さらにイエメン南部にはアルカイダ系組織である「アラビア半島のアルカイダ」(AQAP)が拠点を構えている。米軍は、無人攻撃機による拠点攻撃をくり返ししかけている。5月6日、指導者・アウラキを狙い撃ちしたミサイル攻撃をしかけたが、失敗している。6月7日、南部・ジンジバルでは、10日ほど前に市街を掌握したアルカイダ系武装勢力と治安部隊との戦闘で45人が死亡した。6月22日、南東部・ムカラ市にあるアルマクラ刑務所で、武装グループの刑務所攻撃に呼応して、AQAP構成員63人が大量脱獄した。
 6月29日、副大統領・ハディは、政府が5つの州で支配権を失い、国内の治安が悪化していることを認めた。イエメンも、事実上の内戦状態に突入しているのだ。
 7月7日、サレハは録画演説を行ない「憲法の枠の中で、権力を共有する用意がある」としながら、即時辞任や亡命を事実上否定し、既成勢力のとりこみをあけすけにした。これに対して、7月15日に反政府勢力の一部はサレハ退陣をみすえ、国家運営にあたる暫定統治組織たち上げを発表している。
 サレハがあがけばあがくほど、イエメンは窮地に陥るばかりである。イエメンでは石油や天然ガス関連事業が歳入の7割を占めるが、国内外への主要な供給源である中部マリブの原油パイプラインが反政府組織の爆破攻撃を受け、3月半ば以降は供給をほぼ中止する状態にあり、修理も困難な状況にある。南部アデンにあるイエメン唯一の石油精製所も、マリブからの原油の供給減と外国人労働者の国外退避で閉鎖されている。反政府勢力は、電線など電力網の一部を破壊する攻撃を行なっている。電力不足は物価の高騰も招き、市民生活を直撃している。
 サレハはこれまで米帝―帝国主義への協力姿勢を見せることで延命してきたが、イエメン労働者人民はサレハと米帝―帝国主義への怒りをより鮮明にしている。

バーレーン

 国王・ハマドはサウジアラビア軍を主力とする外国兵1500人を招きいれ、3月15日に3ヵ月間の「非常事態宣言」を発表、真珠広場を戦車で制圧して反政府デモを武力で押さえつけた。5月8日、ハマドは「非常事態宣言」を6月1日に解除するよう命じている。そして、バーレーンに駐屯しているサウジアラビア軍部隊の大半を、7月4日から段階的に撤収させるとしている。
 反政府デモを闘った労働者人民に対して、バーレーン政府は弾圧強化で応えている。4月28日、バーレーンの軍事法廷は「警官2人の殺害」を理由としてデモ参加者4人に死刑判決をうち下ろしている。6月22日、軍事法廷は「国家転覆を謀った」として、シーア派勢力の活動家や野党指導者ら八人に終身刑をうちおろした。
 バーレーン政府の暴挙に対して、シーア派住民の多いイランやイラクなどで反発が広がっている。国王・ハマドは7月から「国民対話」を開始するとしているが、闘う労働者人民は欺瞞的な「対話」を拒否し、反政府デモを今も粘り強く闘っている。
 米帝―帝国主義はリビアやシリアでのデモ弾圧には爆撃や「経済制裁」といった強硬姿勢を露骨に示しておきながら、バーレーン政府の暴挙やサウジアラビア軍の派兵にはおとがめなしを決め込んでいる。バーレーン政府の暴挙を支える米帝―帝国主義への怒りがさらに噴出するのは必至である。

リビア

依然として続く内戦

 リビアではエジプト「政変」直後の2月15日の、「フェイスブック」での呼びかけに応じた労働者人民数百人のデモをきっかけに、一挙に内戦に突入し、内戦は長期戦に入っている。東部のベンガジを拠点とする、前司法書記(法相)・アブドルジャリル率いる「国民評議会」は、旧王族や元閣僚、軍部の1部、イスラム原理主義勢力など雑多な反カダフィ勢力の寄り合い所帯であるが、米帝―帝国主義が大々的に肩入れしているにもかかわらず、未だにカダフィ政権との戦闘に勝ちきれていない。
 「国民評議会」が延命のために、米帝―帝国主義との結託を強めた結果、当初の反政府デモの主体であった学生・青年の離反を招いている。他方、アルカイダ系組織「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ組織」(AQIM)が「国民評議会」支持を表明するなど、アルカイダが「国民評議会」側に流入する可能性もあり、米帝はアルカイダに警戒する姿勢も示している。
 カダフィ政権によるインターネットや携帯電話のメールサービスの遮断、さらに密告の奨励により、学生・青年による反政府デモの組織化が困難となっている。内戦が激化するなか、反政府デモもまた大きな試練に直面している。
 カダフィ政権側は、西部の首都トリポリ周辺を固め、第3の都市であるミスラタを包囲している。北大西洋条約機構(NATO)によるトリポリ空爆を受けながらも、出身部族で固めた精鋭部隊や、外国人を雇い入れた独自の私兵集団による反撃戦を展開している。
 5月12日、「国民評議会」はカダフィ政権崩壊までの期間限定の「臨時政府」設立を発表した。他方で6月27日、国際刑事裁判所(ICC)は、リビアの反体制派を殺害した「人道に対する罪」の容疑で、カダフィら3人の逮捕状を発布した。カダフィ政権側は逮捕状を無視する姿勢を明らかにしている。またカダフィ政権側は、一般市民の殺害を否定する1方で、「犯罪武装集団やアルカイダには対応を取らざる得ない」と説明している。

強まる米帝―帝国主義の軍事介入

 NATO軍は、潜在的な「攪乱要因」とみなしてきたカダフィ政権に見切りをつけて「国民評議会」を押し立て、カダフィ政権打倒を目指して空爆をくり返している。米軍は4月4日以降前面での空爆を行なわなくなり、現在空爆を行なっているのは仏軍・英軍を筆頭として、デンマーク、ノルウェー、ベルギー、カナダであるが、4月25日にはリビアの旧宗主国・イタリアも爆撃への参加を決定した。NATO軍の空爆を、米軍が後方支援している構図である。6月23日、NATO事務総長・ラスムセンは軍事作戦の続行を宣言した。NATOによると、リビア空爆のために戦闘機が出撃した回数は6月27日までに約1万3000回に達している。
 この爆撃で、米軍・仏軍・英軍がイラク同様に劣化ウラン弾を使用していることが指摘されている。米帝―帝国主義は、カダフィ政権を転覆して帝国主義支配を強化するためならば、労働者人民が放射能で汚染され死に至っても1向に構わないのだ。この一点だけでも、米帝―帝国主義の対リビア軍事介入の本質がハッキリと示されている。
 カダフィ政権はNATO軍の空爆を「リビアの石油を狙った武力侵略」と非難し、徹底抗戦を主張している。その一方で4月30日、カダフィは停戦に応じる用意があることを声明で明らかにした。しかし、NATO軍はその直後、トリポリにあるカダフィ一族の邸宅を爆撃し、カダフィの6男・セイフルアラブとカダフィの孫3人が死亡した。また5月12日にも、トリポリにあるカダフィの広大な屋敷をミサイル攻撃した。カダフィ政権側は、空爆から身を守るために女性や子どもなどを「人間の盾」に組織し、軍施設や政府中枢、政権首脳の住宅などに配備している。しかし、NATO軍は民間人の存在などお構いなしに空爆を加え、4人を殺害した。NATO軍は見せしめとして、あえて「人間の盾」を狙い撃ちし、殺害している。6月7日、NATO軍が首都トリポリを大規模空爆し、少なくとも三1人が死亡している。
 米帝・オバマは、対リビア軍事介入に際して、「側面支援」に回る演出を続けている。今後、戦局の打開を狙い空爆に再度踏み込んだり、さらに地上軍を投入すれば、アフガニスタンやイラクに続く、新たな「泥沼」にはまるリスクを背負うことになり、米帝足下からの批判が噴出することになるので、さしあたり「慎重」姿勢をとり続けているのだ。
 7月15日、米国務長官・クリントンは「国民評議会」を、「国民を代表する正統な統治組織」と認める考えを明らかにした。「国民評議会」について「民主改革を進め、国際的義務の順守やリビア国民が必要とする人道援助などでの資金提供を公明正大な方法で実施することを約束した」と評価する一方、カダフィ政権については、「国民に見限られておりもはや正統な権威を持たない」「問題は大佐が権力を放棄することではなく、その時期がいつになるかだ」と言いなした。米帝のお墨付きを得た「国民評議会」はこのクリントンの決定に小躍りして「より多くの国もこれに追随すべき」とする1方、カダフィ政権側は無視を明らかにした。
 しかし、米帝―帝国主義の目論見など、リビア労働者人民にもとっくに見透かされている。アラブ諸国労働者人民は、強権支配にしがみつくカダフィを批判しつつも、対リビア武力攻撃に手を染める米帝―帝国主義への怒りをたぎらせている。
 米帝―帝国主義によるリビア内戦への武力介入を断じて許してはならない。

米帝―帝国主義の占領支配を破綻せしめる中東労働者人民の武装決起

 米帝―帝国主義は、アフガニスタン、イラクと反革命戦争をしかけて占領支配を行ない、帝国主義の中東支配を確立しようとしてきた。しかし、アフガニスタンでもイラクでも、労働者人民が武装決起を粘り強く続けた結果、米帝―帝国主義に疲弊感を強制し、「名誉ある撤退」を演出せざるをえなくさせている。武装勢力の追撃は今もなお続いている。
 さらに、米帝―帝国主義とイスラエルによるパレスチナ支配も、粘り強い武装決起に加え、北アフリカなどのアラブ諸国の学生・青年らによる大衆決起のパレスチナへの波及により、大きく揺らいでいる。イスラエルは孤立を深め、アッバスを押し立てた米帝―帝国主義のパレスチナ介入そのものが崩壊局面を迎えている。シリアなど周辺諸国での動揺とも相まって、既存の政治支配の枠組みまでもが大きく変動しつつある。
 これらの激動は、パレスチナを軸とした労働者人民の実力・武装の激闘の積み重ねの結果、もたらされたものである。パレスチナ解放を前面に押し出した中東労働者人民の激闘は、プロレタリア革命への衝動も孕みながら、さらに前進を続けていくであろう。

イラク

 米帝・オバマはイラク軍の訓練を積みあげた上での「2011年末の完全撤退」なるシナリオを変えていない。オバマは、「名誉ある撤退」を演出することでイラク占領支配の「成功」をアピールしようと躍起である。何としても米帝―帝国主義の影響力を保持しようとしているのだ。
 しかし、イラク労働者人民の激闘は、そんな米帝のペテンを実力で破綻せしめている。イラク政府の「政治空白」を突く形で、武装決起が拡大している。治安部隊などを狙った攻撃も継続している。そして、北アフリカなどのアラブ諸国労働者人民の大衆決起の波が、イラクにも及んでいる。
 4月以降連日のように、爆弾攻撃や迫撃弾攻撃が散発的に起きている。5月22日、首都バグダッドと近郊で17件の連続爆破攻撃があり、計19人が死亡した。6月中の爆弾攻撃などによる死者は271人に上り、前月比で53パーセント増となった。6月14日、中部・バクバにある地方評議会のビルを武装勢力が襲撃し、八人が死亡した。6月21日には中部・ディワニヤで、知事の自宅前で自爆テロがあり、警官ら二6人が死亡した。6月23日には、首都バグダッドの市場などを狙った連続爆発で約40人が死亡した。さらに、6月中の米軍の死者も計14人に上っている。イラク政府は、これらの攻撃の多くがアルカイダ勢力によるものと見ている。また米帝は、未だ約1000人のアルカイダ勢力が存在しているとする見解を示している。
 7月に入り、ロケット弾や手製爆弾による新手の武装攻撃が行なわれている。7月5日にはバグダッド北郊のタジで、爆弾が市庁舎付近で2回にわたって爆発し、35人が死亡した。米軍を狙ったロケット弾攻撃も頻発している。米帝は、イランのシーア派勢力への武器横流しを指摘し、イランへの非難を強めている。7月11日、米国防長官・パネッタがバグダッドを電撃訪問し、イランが提供した武器が占領米軍に使用されていると叫びたてた。米帝は爛ぅ薀鵑龍式勠瓩魘ぶことでイラク占領継続への道筋を作ろうとしているのだ。
 マリキ政権下で宗派間対立、民族間対立が続いている。また、今年2月には「フェイスブック」でのデモ呼びかけに応じたイラク労働者人民数千人がデモをうちぬいている。
 危機感をあらわにする首相・マリキは、5月12日の段階で、2011年末の「米軍撤退」期日以降も、一部の米軍に「駐留するよう要請する可能性」を示唆している。7月5日、米帝は1万人規模の米軍を来年以降も駐屯させる意向を示した。米帝―帝国主義はイラク政府の要請に応える形をとって、2012年以降もイラク占領支配を継続しようと画策しているのだ。そして、マリキ政権は、豊富な石油埋蔵量を売りにして、米帝―帝国主義資本をイラクに積極的に呼び込んでいる。インフラ整備を後回しにして労働者人民に窮乏生活を強制する1方で、石油権益を帝国主義資本に切り売りし、イラク占領支配を継続させようとするマリキ政権に対するイラク労働者人民の反発がさらに広がっている。
 米帝―帝国主義の甘い目論見を完膚なきまでに打ち砕く労働者人民の激闘が、さらに激しくなろうとしている。