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福島原発事故と反核・反原発運動 (986号7面)

 福島原発事故と反核・反原発運動◆   \邯僅始

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 現状―溶融燃料の地下への滞留

 当初から一号機は炉心溶融(メルトダウン)―溶融燃料流出(メルトスルー)を起こしており、二号機、三号機もほぼ一日遅れで同様の事態となっていたと考えられる。要するに現在は、程度の問題があるとはいえ、溶け出した燃料やさまざまな周辺の材質を含んだ高熱の物体が、格納容器の底部から土台部分、さらにその下部にかけて滞留している状態が継続しているのである。東京電力は、7月17日段階でおおむね原子炉が「冷温停止」状態に入っており、「第一段階(ステップ1)」が完了したとしているのであるが、これはとんでもない話しである。これは、原子炉の圧力容器と格納容器がほぼ機密状態を保ち、燃料がおおむね圧力容器・格納容器にとどまっていることが前提としたうえでの話である。炉心溶融以降は圧力計、温度計がきちんと作動している保証もないのであり、現状はあくまでも推測でしかない。原子炉建屋のなかには、ロボットがようやく入れるかどうかという状態なのに、原子炉周辺の状況がきちんとわかっていようはずがないのである。東京電力の発表でも、溶融燃料の格納容器外への流出があることが確認されているのに、「冷温停止」もなにもないものだ。格納容器外へ流出した溶融燃料がまわりの物質を巻きこんだ物体は高熱であるばかりでなく、すさまじい高レベルの放射性物質を含んでいてこれを外部に放出し続けているのであり、落下が止まったとは考えにくいのであり、現在も水素爆発の危険性をはらんでおり、地震などで撹拌されれば、水蒸気爆発や、場合によっては再臨界の可能性さえあると考えねばならないのである。前者について東京電力は格納容器を窒素で充填したとしているのであるが、格納容器外の事態については放置したままなのである。後者の事態への進展は可能性が低いとはいえ、決して無視できることがらではない。ただ、現段階で直接に手を下せる状況にはないので起こらないようにと願うしかないのであるが、問題点は放射性物質の漏出が続いていることである。地下水などへの漏出は現在も続いているのであり、不安定なかたちでの地下水との接触は水蒸気爆発などの危険を拡大するだけであるから、この状態は即座に止めなければならない。同時に、格納容器が破壊されている状況では外付けの熱交換器をとりつけるという現行の方針は重大な欠落があるのである。
 このような状況下で現在早急にやらねばならないのは、一号機から三号機のすべての地下30メートル以上の規模の遮蔽壁を建設し、放射性物質の漏洩を阻止する一方で、このなかでなんとか漏出燃料を安定状況にもっていくということを考えるということである。これは、7月19日に発表された新工程表の「ステップ2」に「地下水の遮水壁の建設に着手」として部分的に方針化されているように見える。東京電力が政府に、数千億円かかるから株主総会以前に公表されたら「市場から債務超過と見なされる」として詳細な内容の公表を手控えてくれ、さらに質問も勘弁してくれと要請した文書が毎日新聞などに暴露されたのである。金がかかるからと意識的なサボタージュが行なわれ、「事態は深刻ではない」というキャンペーンだけがおこなわれていたのであるが、毎日新聞などの暴露によって、結局は遮水壁を「建設」の方向にしたようである。しかし、遅れれば遅れるほど事態が進展するばかりでなく、必要な規模が拡大していき、せっかく作っても事態の進展に間に合わず役に立たなくなるということだけは考えておく必要がある。時間が経過すればするほど溶融物質の自重落下が進行するのであるから、遅れれば遅れるほど深い部分への工事が必要になるのである。しかも、これは、あくまで遮水壁であって、汚染水の流出を考慮したものであり、漏出燃料対策のためのものとはされていないのであり、このままでは強度も規模も不十分にしかなりようがないのである。
 さらに、これは現場の東京電力職員が事故発生直後から強く主張したことであるが、早急に津波からの防護壁をも建築しなければならない。汚染水が外界へ漏洩することを防ぐ構造物なら、海岸線に構築しなけらばならないのであり、津波からの防護壁は不可欠である。こんなことは、誰が考えても最初にやらねばならないことであるのはわかっているにもかかわらず、まったく進行していない。これは、こういった状況が認識・理解されていないからではない。東京電力が、これにも費用に数千億円以上かかるとして意識的にサボタージュしてきたことと政府がこれを追認してきた結果なのである。この津波防護壁については、福島第一原発所長の吉田と東京電力幹部が激論になり、土嚢で津波防護壁に代えるとする東京電力幹部に吉田が「やってられない」と叫んだと報道されているが、この事態はまったく変更されていないのである。
 以上の二点は、なにがなんでも早急にしなければ、流出燃料の落下が進行すると同時に津波の襲来があれば大量の汚染水の海洋流出を招くと同時に、電源喪失による第二次事故を招きかねない問題なのである。

水素爆発と水蒸気爆発、再臨界

 今回の事故を通してはっきりしたことは、スリーマイル島事故、チェルノブイリ事故ともあわせて考えると、「沸騰水型」「加圧水型」の原子炉は、配管、とりわけ冷却系統の配管が弱く、いったんこの系統の事故がおこれば数時間で炉心溶融に至るということである。そして,この種の事故は、非常に短期間に事態が進行するので、なんらかの手当てが功を奏してこれが停まるというのは、僥倖に近いと言わねばならないのである。そして、炉心が過熱状態になった段階で「沸騰水型」「加圧水型」の原子炉ではほぼ確実に水素爆発につながり、さらには水蒸気爆発さえもを起こす危険性があるということである。
 この水素爆発、さらに水蒸気爆発は、実は珍しい事態ではなく、ボイラー全般に共通した事故事象である。蒸気機関の歴史は、この二つの事故の歴史であり、「汽缶(ボイラー)爆発」の危険性はボイラーの教科書には必須のことがらなのである。
 水素爆発は、真空状態で高熱の金属(あるいは炭素棒でも)に水蒸気を吹きつければ単離水素が発生するという程度の化学の初歩の知識分野のことがらなのであり、原発に特有の事態としては、これに中性子が水から水素を発生させるという事象も加わる。そもそも炉心溶融の際の熱量が膨大な上に、中性子による水素発生が加わるから爆発が大規模になるのである。
 水蒸気爆発は、過熱した物体に水が注がれると爆発状態になるという非常に単純な原理であり、「汽缶爆発」の大きな要因を占めている。自然現象では火山爆発(とりわけ海底火山)がそうだとされている。ここで問題なのは、どうして今回の福島原発事故でこの水蒸気爆発が起きなかったのか(少なくとも現在までは)、ということである。チェルノブイリ事故では、水蒸気爆発が火山爆発規模で起きたとされ、これが広範囲な放射能被曝をもたらしたとされるのであり、これは重要な問題なのである。福島原発の溶融燃料の状態は、すでに漏出した状況なので外部が固体、内部は液状となっていると考えられるから、火山のマグマに近いと想定できる。火山の水蒸気爆発に関しては、はっきりしたことがわかっているわけではないのだが、水蒸気爆発は、水温が一定程度以下であることや周辺の気圧があまりに高圧ではないなどの条件のほかに、過熱物体と水が十分に短時間に広範囲に接触することが必要で、「汽缶爆発」では空炊きが進行した状態でボイラーの熱交換器に水がまんべんなく行き渡る必要が言われており、マグマのように固体―液状の物体の場合は、水と十分に撹拌されたコロイド状態(粒子状態)になる必要があるのではないかとされている。ある意味では福島原発の場合は、水に触れる以前に炉心溶融が進んで固まり状態だったために、チェルノブイリ事故のようには燃料棒の間の隅々まで水が行きわたらなかったのではないか、という推測ができるのである。このことは、重要な意味を含んでいるのであって、現在でも溶融物質は表面はともかく内部は液状と想定されるのであり、これが地震などの何らかの原因によって水と撹拌される事態があれば、水蒸気爆発があってもおかしくないということである。
 また、再臨界の可能性について言えば、爐修隆躙雲は去った瓩噺世┐襪覆蕕个匹鵑覆亡鬚靴い世蹐Δ。残念ながら、事態はそうなっていないのである。「もともと臨界状態はなかなか起こりいにくいもの」だから「再臨界の危険はない」という見解があるが、おそらくこれは原発の運転開始―臨界突入時にガンマ線を照射するなどしてウラン235のエネルギー準位を高めるなどの操作をおこない励起状態にもっていくことによって臨界をうながすことなどからそのように言っているのだろうと思われる。しかし、福島原発事故では、そもそも緊急停止直前までは連鎖反応が続いていたのであり、制御棒挿入による中性子吸収がなくなれば、その可能性の高低や期間の長短はともかく、臨界状態に入ると考えておくのが当然なのであり、これを「起こらない」とする方が詭弁なのである。ウラン235の励起状態は、冷温状態に入ってからも数週間は続くとされているのであり、特に今回の事故にあたっては、燃料溶融によって制御棒から外れる状態になっていると同時に、冷却されなくなっているばかりでなく、核分裂後の遷移の過程で出るガンマ線をはじめとする放射線を受け続けているのであるから、ウラン235の励起状態が解消されたとは考えにくいのである。炉心溶融の直後に再臨界が起こらなかったのは、この時期のウラン235の濃度と量や、現在もはっきりしない周辺条件などの問題であり、あくまで偶然のたまものなのである。
 そして、現在の、溶融燃料が地下に滞留している状況では放水も十分届いているはずもないのであるから励起状態が即座に解消されるはずもなく、制御棒がわりに中性子吸収剤―減速剤として投入しているホウ素も、この状況では滞留物に十分届いていると期待するには無理がある。しかも、核分裂後の遷移の過程で出るガンマ線をはじめとする放射線を受け続けていることにはかわりないのであるから、励起状態を継続する条件は揃っているのである。このように考えると、溶融燃料のウラン235濃度と量の総体の集合状態が一挙に変化する状況があれば、再臨界がないなどと保証することはとてもできない状況なのである。これは確かに可能性が高いとは言えないことではあるが、それを無視するような態度が今回の事故を招いたのであり、頭の片隅には必ず置いておかなければならないことなのである。
 すでに見たように、原発で使用される燃料のウラン235濃度は3パーセント〜5パーセント程度であるが、原爆には90パーセント以上の濃度が必要とされる(ただし、爆発的臨界のためだけなら70パーセントで可能だとされている)。だから、原発事故の際の再臨界が、原爆のような爆発や熱線をともなうことは考えにくいのではあるが、今回の福島原発事故を発生させた崩壊熱の10倍の熱量を発生させるわけであり、しかもより多量の放射性物質を再び生み出すのであるから、事故規模を拡大することになる。このことは、注意してし過ぎることはないのである。